「何もなかった日」も、同じくらい大事な情報です
異変を伝えるには、その前が「いつも通り」だった証拠が要ります。基準線は、あとからは作れません。
記録というと、何か変わったことがあった日に書くもの、と思われがちです。でも実際に効いてくるのは、何もなかった日の記録のほうだったりします。
「3日前から」は、その前が分からないと意味を持たない
「3日前から食欲が落ちました」と伝えたとします。この一文が意味を持つのは、その前は普通に食べていたという事実とセットになったときだけです。
もし2週間ずっと食が細いのであれば、まったく別の話になります。急に落ちたのか、じわじわ落ちてきたのか。経過の形が違えば、疑う原因も変わります。
「いつからか」を答えられる人は多いのですが、「その前はどうだったか」を答えられる人はぐっと減ります。
基準線は、あとからは作れない
これがいちばん厄介なところです。
具合が悪くなってから「先月はどうだったかな」と思い出そうとしても、もう無理です。人の記憶は、印象に残ったできごとだけを残して、平穏な日々をきれいに消してしまいます。
元気なうちにしか取れない情報がある。 何もなかった日の記録は、そのための貯金のようなものです。
記録するのは「異常」ではなく「その日」
考え方を少し変えると楽になります。記録を「異常を書き留めるもの」ではなく、「その日を1行残すもの」と捉える。
完食した。いつも通りのうんち。30分の散歩。どれも書く価値がないように見えますが、この積み重ねがその子のいつもを作ります。半年後に何かあったとき、比べる相手になるのはこの記録です。
続けるコツは、書く量を増やさないこと
毎日ぜんぶ埋めようとすると、まず続きません。
- 全部の項目を埋めない。その日ついでに押せたものだけで構いません
- 抜けた日を埋めにいかない。空いた日は空いたままでいい
- 思い出して書かない。あとから書いた記憶は、あいまいなぶん精度が落ちます
記録が途切れた日があっても、基準線としての価値は残ります。完璧でなくていい、というのは慰めではなく、実務的にそのほうが続くからです。
数字がなくても、比較はできる
「いつも通り」が並んでいるだけの画面は、一見なんの情報もないように見えます。でも診察室でその画面を見せたとき、「ここまでは普通だったんですね」という一言が返ってくることがあります。
その一言が出た時点で、何もなかった日の記録は仕事をしています。
体重は、いちばん強い基準線
数字で残るぶん、体重は比較が確実です。月に1回でも記録しておくと、あとから効いてきます。
体重の変化は見た目では分かりません。毎日会っているとなおさらです。「なんとなく細くなった気がする」より、「3か月で2.8kgから2.4kg」のほうが情報としてはるかに強い。
抱っこして人用の体重計に乗り、自分の体重を引く方法でも十分です。毎回同じやり方でやれば、比較には使えます。
写真も、基準線のひとつ
目の濁り、毛づやの変化、腫れやしこりの大きさ。ゆっくり進むものほど、日々見ている家族の目には映りません。
月に1枚、同じような構図で撮っておくだけで、半年前と並べられます。気になる場所があるなら、そこだけ近くで撮っておくのも有効です。
ⓘ 一般的な情報の提供であり、診断や治療の助言ではありません。気になる症状があるときは、記録を持ってかかりつけの獣医師にご相談ください。
Wandary は、ごはん・うんち・散歩をワンタップで残せます。通院ノートには記録のない日や異常のなかった日も省略せずに並ぶので、「いつもの状態」がそのまま基準線になります。